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大宮にあるから大宮ソフト

カルドセプトにおけるダイス目についての一考察

time 1999/06/21

1. はじめに

カルドEX発売後約1ヶ月半がたった。ネットなどでユーザーの皆さんの反応をうかがうと、
概ね好評のようなので一安心である(まあ、つまらんと思った人は書き込みをしないという話もあるが)。

しかし、世の中に完璧なゲームはない。批判もあって当然である。それらの意見の
中で最も多いのが「ダイスの目がインチキくさい」というものである。
これはSS版から言われていたことだが、我々大宮ソフトの公式見解としては「ダイス目の操作はしてません」である。つまり、濡れ衣なのだ。
「ユニットの絵が雰囲気に合わない(すまぬ)」とか、「ストーリーが薄い(すまぬ)」とかいう意見なら、我々も陳謝しつつ弁解もしよう(それぞれ理由はあるのだ)。しかし、やってないことに対しては陳謝も弁解もできない。

…とはいえ、あまりにも同様の意見が多いので、私自身も心配になってきた。「実は乱数ロジックにバグがあるのではないか?」
「知らないうちにH氏が秘密のプログラムを入れているのではないか?」など…。
と、いうことで、今回、私自らがこれらの疑問について調査・検証してみた。
(もっとも、開発側の提出したデータを信用してもらえるのか、
という話はあるのだが。データ改ざんはしてません…計算間違いはあるかもしれないけど)

2. 調査方法

この調査は、プレイをビデオで録画し、後にデータを採取することで行った。
調査対象は最も疑われている(?)ゼネス。対戦の舞台としたロカの総マス数は22であり、ダイスは1?6の目が出る。対戦は2回行った。ゼネスは第1戦においてヘイストを、第2戦においてフライを使用。
ヘイストは乱数そのものを操作するため、データから除外したが、フライは各々の目を1回分のダイスとして扱った。もちろん、プレイヤーのブックにはダイス操作のカードは入っていない。
それ以外は通常のゲーム同様、勝利を目指すプレイを行った。

3. 結果と考察

試合終了までのラウンド数は第1戦30R、第2戦が46Rであった。
第1戦はゼネスが勝利し、第2戦はプレイヤーが勝利した。

(1)各出目の発生頻度

ダイスインチキ説でまず浮上するのは、「プレイヤーは小さな目ばかり出て、コンピュータは大きな目ばかり出す」というものである。そこで、2戦における各セプターのダイス目発生頻度について調査を行った。

表1
2試合における各ダイス出目回数とその合計
出目P1P2P計Z1Z2Z計本物
8101878157
35845912
9817410146
11011610169
28101896
751228106
(注)
P1、P2、P計:それぞれ、プレイヤー第1戦、第2戦、2戦の合計
Z1、Z2、Z計:それぞれ、ゼネス第1戦、第2戦、2戦の合計
本物:本物の6面ダイスを46回振った結果

表2
2試合における出目の平均(少数点第2位を四捨五入)
P1P2P平均Z1Z2Z平均
平均3.23.63.42.83.73.3
(注)
P1、P2、P平均:それぞれ、プレイヤー第1戦、第2戦、第1戦と2戦の平均
Z1、Z2、Z平均:それぞれ、ゼネス第1戦、第2戦、第1戦と2戦の平均

表1は各出目の発生数である。第1戦において、プレイヤーは3-1-6の順に多く目を出している。ゼネスは1-4-2(3)である。
これを見ると必ずしもゼネスが大きい目ばかりを出しているとは言えない。第2戦も同様だが、数値のばらつきは少なくなっている。1戦と2戦の合計でプレイヤーの1の目が最も高くなっているが、2番目の3との差は1であり、またゼネスの1の回数と比べても大差が無いことから誤差と言ってよいだろう。サンプル数が少ないため、出目にはかなり片寄りがある。
参考までに、本物のダイスを振った結果を付けた。実際にダイスを振った場合でも、最も多く出た目と少ない目では倍の差がある。50回程度では均等にはならない。これはコンピュータでも本物でも同様である。

また、ダイス目を操作している場合、ダイスの出目の平均値が異常な値になることが考えられる。
6面ダイスの期待値は3.5である。表2はこの点を検証すべく出目の平均を算出したものである。サンプル数が少ないながらも、ゼネス、プレイヤーともに3.5に近い値を出している。また、これを見る限りではむしろプレイヤーの方が若干大きい目を出していることが分かる。

(2)マップ上の各土地への停止数

次にインチキ説として考えられるのは、なぜか高い土地に何度も止まってしまうというものだ(私も経験がある)。そこで、実はマップ上に「止まりやすい土地」があるのではないかと考え、2戦において各土地に何回止まったかを記録した。

表3
2試合における各土地への停止数
土地NoP1Z11計P2Z22計総計
0112245
2021235
2242359
0112134
2132358
2133369
0111234
1122357
44811210
102131347
110112023
120002466
133142359
140111123
152244159
1643722411
171233258
180113478
191233147
200005277
212352138
222130225

(注)
P1、Z1、1計:それぞれ、第1試合でのプレイヤーの停止数、ゼネス停止数、プレイヤーとゼネスの停止数合計
P2、Z2、2計:それぞれ、第2試合でのプレイヤーの停止数、ゼネス停止数、プレイヤーとゼネスの停止数合計
総計:2試合の合計

第1戦では、9番の土地に止まった回数が他に比べ非常に多い。これを見ると、確かにこの土地は止まる確率が高いように見える。
しかし、第2戦においてこの土地に止まった回数は、他に比べむしろ少なくなっている。また第2戦では、特に飛び抜けて多い土地はない。これらから、第1戦の9番もサンプル数の少なさによる片寄りである可能性が高い。

しかしながら、ある土地から数ラウンド後にどの土地に止まりやすいかは、実は決まっている。
例えば2ラウンド後?つまり2回ダイスを振った場合?2つの目の合計が7になる確率が最も高いため、7つ目の土地に止まりやすいことになる。もっとも、周回を重ねるうちにどんどんこの影響は薄まっていくので、最終的には均等化されていくハズだが…わずかながらゲーム全体にも影響を及ぼし、止まりやすい土地を作っている可能性が無くはない。
どちらにせよ、これはダイスの目の性質によるものなので、コンピュータのみを利するように働いたりはしない。

(3)実際のプレイ感

参考までに、実際にプレイした際の印象や特筆すべき事柄を記す。
調査方法で触れたが、これは通常にプレイした後に録画したビデオで検証を行ったもので、
実際にはプレイ中にダイス目について全体的な傾向を把握することは出来なかった。そのため、ゲーム中の印象と結果に多少の食い違いがあった。
例えば、第1戦についてプレイ中、1が飛び抜けて多く出た印象があったが、実際には3や6もほぼ同数出ており、そのことはゲーム中には気
付かなかった。また、1が3ラウンド続いたことがあり、「これは」と思ったが、後に調べてみると、ゼネスは1を4回連続で出していたことが分かった。
これもゲーム中には気付かなかった。
これらのことから、ゲーム中印象に残る事象と残らない事象に差があるのではないか。
自分の場合、小さい目が出た時の印象が強く、敵の場合は大きな目を出した時の印象が強いのではないかと考えられる。

4. まとめ

面白いので、真面目な論文調で書いてみたが、実際にはあまり説得力のあることは言えてないようだ。
そもそも、これはある1面を検証したに過ぎず、やろうと思えば「都合のいい目を出しつつ統計的におかしくならないような操作を加える」ことも不可能ではない。でも、そんなめんどーなことやってると思えます?だいたいそんなことをするくらいなら、ホーリーワードを使えるようにするっちゅーねん(現在、AIはホーリーワードを使わない)。またデザイン的にも、そこまでしてAIを強くする必要性が無いし(クリアしてからが本当の面白さだから)、他のボードゲームと違い、ブックの差で個性や強弱を出せるので、ダイス操作をする意味があまり無いのだ。

…とまあ、ここまで書いてみたものの、これで完全に疑いが晴れたとは思っていない。しかし、少なくとも「思い込んでいたよりはマシ」だったと思ってもらえるのではないだろうか?(だめですか?)


参考文献
「カルドセプトエキスパンション公式ガイド」P130、スザクゲームズ、アスペクト刊

大宮ソフト

大宮ソフト

様々なパブリッシャーを渡り歩く、流浪のソフトハウス。

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